今野 美穂

Miho Imano

今季限りで引退を表明した今野美穂選手が、
棒高跳びに賭けた想いを語る

その端正な顔立ちから、常に「陸上界のアイドル」という言葉がついて回った彼女。そうした意味では、これまで陸上や棒高跳びを知らなかった者の興味も引き込み、競技認知度に貢献したひとりかもしれない。しかしその華やいだ容姿とは裏腹に、アスリート人生では悩み藻掻きの連続だった。

あのしなやかで美しいフォームは、
体操からの競技転向が故

中学時代は器械体操に夢中になり、高校でも体操をするべく入った部活動は新体操だった。「私が棒高跳びへ種目転向をしたのは高1の夏頃です。入学当初は新体操部に入っていましたが、陸上部の顧問に勧誘されて始めました。それまでは棒高跳びという競技を全く知らなかったのですが、部活は一度も休まずに練習に取り組みました」と振り返る。しかし弛まぬ努力の甲斐あり、高校3年生では秋田国体に出場した。「棒高跳びは、踏み切ってから振り上げるところなど体操要素が非常に強いので、私の経歴が役立ったと思います。トレーニングでも鉄棒をよく取り入れていました。またポールを持って走るときに体がぶれないように体幹トレーニングも重要視していました」と語り、棒高跳びを専攻する人の参考になればと続けた。

「もう一度、陸上を好きになってから」。
プレッシャーとも戦った競技人生

今野美穂の陸上選手としての競技年数はわずか10年間という短い間だった。しかしその才能はすぐさま頭角を現し、日本代表にまで一気に上り詰めると、実業団に身を置いてまで陸上を続けた。その今野選手は、2020年の東京オリンピックを待たずに、2017年シーズンで現役を引退する。「私の中での最大の目標はリオ五輪への出場でした。現在所属のトーエルで陸上競技を続けさせてもらえると決まった時から、とにかくリオをめざしてひた走ってきました。しかし、想いは届かず、2016年シーズンを通して競技成績も満足いく結果が出ず、自分の中で陸上に対するモチベーションが下がってしまったんです」と心の内を明かす。自分で自分のことを「ネガティブな性格」と分析する今野選手。強いプレッシャーからのイップスなのか、大学時には踏み切ることが怖くなり、仲間やコーチに「大丈夫だよね?いけるよね?」と問いかけ「いける」という暗示をかけてもらって飛んでいたという。真面目な性格ゆえの繊細な心の動き。それはいつしか自分の心を苦しめてしまっていたのだろう。「引退を考えたのは、2016年シーズン。自分の中で陸上に対する熱い想いを失っていることに気づいた時です。しかし、そんな気持ちのまま終わりたくないと思い直し、2017年シーズンは競技を楽しみ、もう一度好きだという気持ちを取り戻したいと思っていました」。今野選手の空中に弧を描く美しいジャンプは、多くの人の心に残り続けることだろう。

できたことが、できない。
成果の悩みは初心に返り修正

棒高跳びという競技を10年近く続けてきました。その途中には『以前はできたことなのに、なんでできなくなったんだろう?』という問題が出てくることもあって悩んだこともありました。ひとつ進歩すると、以前のものができなくなる。練習や進化の過程には、そうしたことが多々あるように思います。そんな時、新しい練習を取り入れるのもいいと思いますが、私は棒高跳びを始めた頃の基本の練習を思い出して、もう一度初心や初歩に立ち返ることを行っていました。実際にやってみると、意識しなければいけないポイントなど忘れていたことにたくさん気づくことができます。たとえ伸び悩んだとしても、決して諦めてしまうことなく、練習を続けることが大事だと思います。皆さんの活躍を応援しています。

今野 美穂

所属:トーエル

成績

第19回アジア陸上競技選手権大会女子棒高跳日本代表