天皇盃 第23回 全国男子駅伝

3年ぶりの王座奪還
絆のチカラ、ここに結実

47都道府県の男子駅伝No.1を競う『天皇盃 第23回全国男子駅伝』が1月21日、広島県・平和記念公園前をスタートする7区間・48kmで行われ、埼玉県チームが3年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。
「何としても昨年の雪辱を果たす」という埼玉陸上界全体の意思と、「1秒でも早く設楽選手へ」という全員の意識の絆がもたらした圧巻の勝利だった。

「目標は優勝のみ。全員が力を出し切れば十分狙える選手が揃った」と北村亮祐監督は前日のインタビューできっぱりと語った。その心中には、20位と思わぬ惨敗を喫した前回大会の悔しさが去来する。「選手の力を引き出せなかったのは私の責任」と自分を責めた反省を胸に、「1秒1秒の大切さ」を全員に徹底。なるべく好位置でエース・設楽へタスキをつなぐ作戦を立ててレースに臨んだ。

気温12.8度。ここ数年の雪がちらつく寒い天候とはうって変わり、快晴のコンディションの中、12時30分の号砲で一斉にスタート。1区を託されたのは前回大会と同じ橋本龍(東京農大三高)だ。昨年は区間44位と予想外の結果に終わった橋本。涙にくれた苦い経験を生かすように、終始トップから離されない位置をキープする。「彼の実力はこんなものではない」と昨年のレース後に語った北村監督の信頼に応えた快走。1位と15秒差の10位で2区の中学生・分須尊紀(美里中)につなぎ、見事雪辱を果たした。

タスキを引き継いだ分須は、「沿道からの声援を励みに楽しく走れた」と語るように、昨年8月の全中陸上1500mで3位に入った実力通りの堂々とした走りを展開。区間6位で3kmを走り切り、社会人の牟田祐樹(日立物流)へリレーした。実力ある社会人・大学生ランナーがひしめく3区を任された牟田は、落ち着き払った足運びで周囲をけん制。集団の中でライバルたちとの駆け引きを続ける。4区へつなぐ時点でトップとの差は19秒。ここまで理想的なレース運びを実現した。

「鍵になるのは、タイムで少し有力な他県勢に劣る高校生。彼らの走り次第で優勝が見えてくる」とレース前北村監督は語った。その期待を背負い4区・宮坂大器(埼玉栄高)がスタート。頭を巡る思いはただ一つ。「ライバル・長野県に離されないこと」。予想通り、中継所では8秒後ろにいた長野県が追いついてきた。しかし冷静に後を追い、食らいつく。全力で行こうと決めていた最後の200mで再び前に出て、先輩の早田祥也(埼玉栄高)へリレー。21秒差の2位へ順位を引き上げた。いつも練習を共にする後輩・宮坂の想いを受け継ぎ、タスキを握りしめて走り出した早田。やはり気になるのは長野県チームの動向だ。ベストタイムで劣っていることは知っている。しかし駅伝は個人競技ではない。「1秒でも早く次へつなぐ」という自分の役割を果たすことだけを考えた。「最後は楽しんで走ることができた」という早田は、先頭から少し差を広げられたものの優勝が狙える位置を保って6区の中学生・篠木珠良(吉川市立南中)へ託した。

憧れの選手と共に走る初めての大舞台を「楽しもう」と臨んだ篠木。エース・設楽につなぐ重責にも気負うことなく、快調な走りを披露する。集団での駆け引きに冷静に対処しながら、抜け出す機会を伺っていた。気がつけば45秒の差を32秒詰め、わずか13秒差でアンカー設楽へ。見事区間賞を成し遂げる圧巻の走りを見せた。「1分以内なら抜く自信はある」と前日に語っていた設楽悠太(Honda)。絶好調で広島に入ってきたハーフマラソン日本記録保持者に、わずか10秒余りでタスキをつないだ時点で勝負は見えた。走り出した設楽の表情には、余裕さえ伺える。最長13kmの区間の2.5km地点で長野県を捉え、しばし並走するものの、一段ギアを上げた設楽にもはや敵はいなかった。最後は後続を46秒引き離し、両手を突き上げながらゴールテープを切った。

3年ぶりに王座に返り咲いた埼玉県。出走予定選手の記録を基にした事前ランキングで1位とされていたことからもわかるように、各年齢層でベストなメンバーを揃え「前回大会の雪辱を果たす」という埼玉陸上界全体の思いを背負い、そして見事にチーム全体がそれに応えた団結力の勝利であった。

「陸上・埼玉」の誇りを取り戻した英雄たち

第1区(7.0km)

橋本 龍 選手

記録:20:11 区間10位
[東京農業大学第三高等学校]

高速レースの中でも粘り、ラスト勝負に持ち込もうと考えていた。中盤もたついてしまったが、トップと15秒差で渡せたのでまあまあかな。でも内心は区間賞を狙っていたので、100点に程遠い。そこにちょっと悔しさが残る。

第2区(3.0km)

分須 尊紀 選手

記録:8:37 区間6位
[美里町立美里中学校]

優勝に貢献することが目標だった。走る前は周りの高いレベルについていけるか不安だったが、沿道からの声援が力になり、自己ベストの走りをすることができた。初めての都道府県駅伝は、とても思い出深い大会になった。

第3区(8.5km)

牟田 祐樹 選手

記録:24:24 区間14位
[日立物流]

直前練習で調子が上がらなかったので、冷静に集団について駆け引きをしようと思った。高校生のときに補欠に甘んじた大会で、6年分の悔しさを晴らすことができた。あきらめないで続ける大切さを県内の中高生に伝えられたとしたら嬉しい。

第4区(5.0km)

宮坂 大器 選手

記録:14:32 区間4位
[埼玉栄高等学校]

予想通りマークしていた長野が後ろから追いついてきたが、ここで離されたら次の区間が苦しくなると思ったので絶対についていこうと思った。ラスト200mは監督の指示通り“死に物狂い”で走り、チームを活気づけられたことが嬉しい。

第5区(8.5km)

早田 祥也 選手

記録:25:24 区間6位
[埼玉栄高等学校]

後輩の宮坂がいい位置で持ってきてくれたので、ライバル視していた長野に離されないことを一番に考えた。2位から5位に落としてしまったが、なんとか優勝を目標にできる目安内ではいけた。楽しく走らせてもらったし、優勝できて嬉しい。

第6区(3.0km)

篠木 珠良 選手

記録:8:50 区間1位
[吉川市立南中学校]

代表に選ばれてから『優勝したい』とずっと考えて緊張していたが、朝練習で設楽選手から『記録よりも楽しめ』と声をかけてもらったことで楽になった。区間賞をとることができたが、狙っていた県の区間新記録は叶わなかったので悔しい。

第7区(13.0km)

設楽 悠太 選手

記録:37:12 区間1位
[Honda]

レース内容よりもトップでゴールテープを切ることが役割だった。他の選手が1秒を大切につないできてくれたので、リラックスしてその目標を果たせた。途中まで長野の關君についてこられたが、離したところからは自分のリズムで走ることができた。

北村 亮祐 監督

県内の高いレベルで争い、着実にレベルアップしてきた中高生が力を発揮して、うまく設楽につないでくれました。そういった意味で今回の優勝は、埼玉県陸上の総合力の勝利だと思っています。レース展開は最初に描いていた通りの理想的なものでした。優勝を確信したのは、設楽が並走から離れてきた時点。今回は優勝候補に挙げられたことでプレッシャーがあったが、その中でも選手たちがしっかりと力を発揮してくれことが何よりも嬉しいです。

サポート

白鳥 哲汰 選手

[埼玉栄高等学校]

選考会で力を出せず、サポートにまわり今は悔しさが強い。埼玉は選手一人ひとりが力を発揮したからこそ優勝できた。来年は自分が出て連覇に貢献したい。

サポート

奥山 颯斗 選手

[上尾市立大谷中学校]

出場したかったが篠木君、分須君には力及ばず残念。来年こそは高校生区間で出られるように、今年1年間は頑張って練習したい。

サポート

小山 直城 選手

[東京農業大学]

出場は叶わなかったが、埼玉代表に呼んでもらい、トップレベルの選手を間近で見られたことは今後の糧になる。前回の優勝も経験しているが、今回も素直に嬉しい。

埼玉陸上競技協会理事長

中田 次夫 理事長

合宿からレース当日まで、うまく調整して臨んでくれた選手、スタッフ全員の勝利だと思います。チームがよくまとまってくれました。前回の優勝も、今回の優勝も、設楽選手は頼もしい存在で牽引してくれましたが、彼の次を担う選手を育てて優勝を重ねることが、今後の埼玉県陸上界の課題かと思います。

広島埼玉県人会

松井 修 会長

目の前で郷土の選手が躍動する姿を見ることができて感激しています。広島で暮らす埼玉県人の大きな励みになりました。選手たちに、感動をありがとうと伝えたいです。